明日バカをやってみようと思えちゃう名著 「西南シルクロードは密林に消える」
「可愛い子には旅をさせろ」「旅はいいものだ」「人生は旅」と21世紀の今日において旅行=いいもの、金を払う価値のあるものという価値観が一般的になっている。
だが、旅行にも2種類あり、普段とは違う環境で悠々自適な生活を送る慰安旅行と呼ばれるものと、海外などの未知の環境に飛び出て普段できないようなことに挑戦する....。
冒険?と呼ばれるタイプのものである。
基本的に今日の日本社会で良しとされているものは、旅行会社のパンフレットやパッケージの品ぞろえを見る限り、前者の慰安旅行と言ってもいいだろう。
逆に後者の冒険はマニアックなものが好きな人にはウケるが、多くの人に受け入れられるものかというとそうではない。
何故なら冒険とは未知というわけのわからないものを味わうものであり、未知と恐怖は繋がっているからだ。つまり冒険というものは本質的には怖い、もしくは怖い雰囲気が漂うものである。だが、その恐怖に打ち勝つことが出来たならば、とてつもない達成感と名誉が得られるのもまた事実である。
それを象徴するように大昔なら「西遊記」、現代なら「深夜特急」といった名著とされる紀行文が多く出版されている。
今回はそんな冒険を極めた高野秀行氏が綴った名著「西南シルクロードは密林に消える」の魅力を語っていきたいと思う。
高野秀行氏について&魅力
著者である高野秀行氏はノンフィクション作家として活動しており、
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」というモットーのもと、主に海外で同氏が遭遇した出来事を文章という形で世の中に送り出している。
彼の魅力は「某国で麻薬製造を手伝う」「ゲリラに助けてもらってインドに密入国する」「辺境の国の現地人に作ってもらった口噛み酒を日本に持ち帰り、そのあと日本で晩酌する」といった奇々怪々な行動である。
だが、ただおかしな行動を取るだけならYouTuberと変わりはないが、彼の綴る文章からは実際にそれに携わっている人、その国独自の風習に従い生きる人々の心情や考えを感じとることができ、自分の常識は他人の非常識という言葉の意味を改めて感じ取ることが出来る。
それを含めて考えると、彼の取る奇怪な行動の数々は無意味ではなく、意味のある行動であり、思わず納得してしまう部分が真の魅力かもしれない。
本の魅力
西南シルクロードという未知を解き明かすという冒頭から始まる本書であるが、ページをめくるごとに西南シルクロードについての記述は減っていく。
だがそれと同時に増えていくものがある。そう、奇怪な行動だ。
もう一度言う。奇怪な行動だ。
これから読む人のために内容は伏せるが、「高野秀行の犯罪目録in 西南シルクロード」と解明していいぐらいには犯罪たっぷりである。
だが不思議なことに、同氏の取る行動に一切の不快感を抱かないのだ。そればかりか、思わず納得できてしまうのである。何故なら同氏の取る行動はその地では常識であったり、ちゃんとした意味のあるばかりだからだ。
よく奇怪な行動を取って炎上するといったニュースを見かけるが、炎上する理由はやはり、意味がないからだろう。
非常識なのに、ありえないのに、やっちゃダメなのに、なぜか納得してしまう。
面白く感じてしまう。それこそが本書の一番の魅力である。
とりあえず、買って読んでみるといい。解説含め533ページを読み切ったあなたはきっと、価値観が180度変わっているだろうから。
以上。
本の評価
読みやすさ:4
おすすめ度:5
読みべき人:バカやりたいひと人、面白いものを求めている人とかが読むといいかも
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